宝塚のショーは、どれも豪華で見どころ満載。しかも魅力的なショーが公演ごとに次々と生み出されているのが現状です。
ただ、それだけに”名作”と呼ばれるショーを選ぶのはちょっと難しいもの。初心者さんにもおすすめのショーは?と聞かれて、悩む方もいるのではないでしょうか?
そこで今回は、宝塚ファンならば1度は名前を聞いたことがあるであろう、再演を繰り返しているショーを中心に、名作ショーをご紹介します。
ノバ・ボサ・ノバ
初演・作 鴨川清作
公演年と主な出演者
- 1971年星組 真帆志ぶき 大原ますみ 鳳蘭
- 1972年雪組 真帆志ぶき 高宮沙千 郷ちぐさ
- 1972年雪組 郷ちぐさ 高宮沙千 汀夏子
- 1999年雪組 轟悠 月影瞳 香寿たつき
- 1999年月組 真琴つばさ 檀れい 紫吹淳
- 2011年星組 柚希礼音 夢咲ねね 夢乃聖夏
「熱さ」を取り戻したい時に!
リオのカーニバルを舞台に、義賊と泥棒の対立が描かれるのかと思いきや、それだけではありません。宝塚らしく、ちゃんと恋物語も織り込まれています。
ストーリー仕立てになっていることもあり、描かれる恋物語の数は3つと多め。ショーよりもお芝居が好きで、という方にもとっつきやすいショーといえるでしょう。
いわゆる「ひと夏の恋」を熱いカーニバルにのせて描くショーのため、音楽もダンスもとにかく熱くて解放的なものが多いのが特徴。
夜通し踊るカーニバルのシーンも圧巻ですが、クライマックスの「シナーマン」は多数のタカラジェンヌが踊り狂う、いわゆる総踊りの名シーンです。
このショーの中では裸足で踊るシーンが出てくるのですが、シナーマンもその1つ。
足先までオシャレを極めた靴で踊る普段のショーも楽しいですが、人間の内側からほとばしる力強さや熱さを存分に表現するには、裸足がふさわしいことを実感できるでしょう。
踊れる方なら思わず体が動く、そうでない方もタカラジェンヌと共に踊りだしたくなること間違いなし。
ラテンのリズムに乗ってストレスを吹き飛ばし、燃えんばかりの情熱を取り戻す。そんなひと時を楽しめるでしょう。
名曲「アマール・アマール」
ノバ・ボサ・ノバの中でもキーとなる曲の1つ。タカラヅカスペシャルなど、イベント時に披露されることも多い曲です。
2014年、宝塚100周年のコンサート「時を奏でるスミレの花たち」では、初演時の主演者・真帆志ぶきさんが披露されたことでも話題になりましたね。
伴奏が刻むラテンのリズムに乗せて、トップスターさんや2番手に相当する男役さんが歌われることが多い曲。
耳なじみがいいので自分で覚えて歌うのも楽しいのですが、男役さんだからこそ出せるセクシーで甘やか、だけど力強い歌唱を存分に堪能するのがおすすめ。
「何年に上演された時の誰々の歌い方はこうで、違う年のこの人の歌い方はここが特徴的」なんて、聞き比べをするのも楽しいものです。
EXCITER!!
初演 作・演出 藤井大介
公演年と主な出演者
- 2009年花組 真飛聖 桜乃彩音 壮一帆
- 2010年花組 真飛聖 蘭乃はな 壮一帆
- 2017年花組 明日海りお 仙名彩世 柚香光 (「EXCITER!!2017」)
- 2018年花組 柚香光 華優希 水美舞斗 (「EXCITER!!2018」)
カッコいい!に酔いしれよう
「EXCITER!!」はここ10年、トップ娘役のお披露目公演など、ここぞという場面で再演を繰り返しています。
その理由の1つはこのショーが花組らしさ、言い換えれば宝塚らしさをこれでもかというほど体現しているショーであることでしょう。
「EXCITER!!」はカッコいい男役の活躍、豪華な衣装、華やかなダンスや歌など宝塚ファンが見たいと思う要素を凝縮したショーなのです。
ショーの始めにパレードが組み込まれることは、他の作品でもよくあります。
でも、この作品で赤と黒のゴージャスでちょっと妖しささえ感じる衣装を着たタカラジェンヌたちが居並んで踊るのは圧巻。
ウインクなど、ファンにとってはたまらないしぐさが「振り」として入っているのも見どころです。
しかも、歌詞もメロディーもカッコよくて覚えやすい主題歌にのせたパレードなので、ショーの序盤からボルテージは最高潮に上がります。
もちろんそれ以外の場面にも見どころが満載。1つのショー作品に1回だけ入ることが多い男役さんの群舞が2度入りますし、スーツでキメた男役さんを軸にした場面も見られます。
宝塚らしい、花組らしい「カッコよさ」を満喫したいなら、ぜひ1度はチェックしてください。
お好みはどの「Mr.」?
再演ごとに大きく場面構成が変わるショーもあります。でも、このショーは基本的な構成はほとんど変わりません。
再演ごとに明らかに変わっているのは第3章くらい。重厚感やカッコよさ、妖しさを前面に押し出したショーの中で息抜き的な役割を担う、コミカルさ満載のシーンです。
初演とほとんどの再演時で、ダメダメ男の主演スターさんが、あるきっかけでカッコよく変身!という流れになっています。
どの主演スターさんもこのシーンでは「Mr.」が頭につく役名をつけられているのが特徴。初演と1度目の再演の真飛さんは、真飛さんの愛称が「ゆう」であることから、「Mr.YU」でした。
真飛さん、明日海さん、柚光さんとあなたのお好みにぴったりハマる「Mr.」はどの方になるでしょうか?
ビシッと決めた時とは一味違う、母性本能すらくすぐりかねない「Mr.」たち。ぜひ見比べてください。
シトラスの風
初演 作・演出 岡田敬二
公演年と主な出演者
- 1998年宙組 姿月あさと 花總まり 和央ようか
- 2014年宙組 凰稀かなめ 実咲凜音 蓮水ゆうや (「シトラスの風Ⅱ」)
- 2015年宙組 朝夏まなと 実咲凜音 真風涼帆 (「シトラスの風Ⅲ」)
- 2018年宙組 真風涼帆 星風まどか 芹香斗亜 (「シトラスの風-Sunrise-」)
前に進む力がほしい時に!
パワフルで歌がうまい。それが宙組というイメージを持つ方も多いでしょう。そんな魅力が随所に溢れるショーです。
激しさと爽やかさを持ち合わせたメロディーが特徴の主題歌も、迫力満点なコーラスで披露されます。
再演を重ねるごと変更になっているシーンも多いのですが、プロローグ後「夢・アモール」をトップスターさんを中心とした男役さん数人で歌うシーンは健在。
ここで、その時々の宙組主要男役さんをチェックできる楽しみもありますし、個々の男役さんの個性を十分に味わえるのも楽しみです。
特に圧巻なのは、初演時から引き継がれている「明日へのエナジー」。ベルリン公演や宝塚スペシャルなどでも再演されているので、ご存知の方も多いでしょう。
ごく静かな出だしから、ダンサーも歌手も一体となって踊りまくるシーンのフィナーレまでの流れは、感動の一言に尽きます。
ちょっと元気がない、何とか前に進む気力がほしいということは誰にでもあるもの。そんな時に見たら、自分にもできるかも?!という元気が湧いてくるでしょう。
変化も味わい!
先ほども少しお話ししましたが「シトラスの風」は「EXCITER!!」と違って、再演のたびに大きな改変がなされています。
初演から残っているシーンは上記の「夢・アモール」「明日へのエナジー」と「ノスタルジア」くらい。
でも、だからこそ時代やスターに合わせた、演出の違いを如実に味わうことができます。
特に初演から2015年の再演まで採用されていた「そよ風と私」。2018年には「アマポーラ」に改編となりました。
南国ムードたっぷりのホットなシーンから、幻想的なムードさえ漂うシーンに衣替えしています。
このスターさんがいたからこそ、こんな演出だったのかな?と想像を膨らませながら、何バージョンも見比べてみてはいかがでしょう。
ザ・レビュー
初演構成・演出 横澤英雄・岡田敬二・草野旦
公演年と主な出演者
- 1977年雪組 汀夏子 高宮沙千 麻実れい
- 1977年花組 安奈淳 上原まり 松あきら
- 1984年月組 大地真央 黒木瞳 剣幸
(「ザ・レビューⅡ~TAKARAZUKA FOREVER~」) - 1985年星組 峰さを理 南風まい 湖条れいか 日向薫
(「ザ・レビューⅢ ~シャンテ・ダンセ・ダムール~」) - 1999年宙組 姿月あさと 花總まり 和央ようか
(「ザ・レビュー’99」) - 1999年花組 愛華みれ 大鳥れい 匠ひびき
(「ザ・レビュー’99」) - 2000年花組 愛華みれ 大鳥れい 匠ひびき
(「ザ・レビューⅣ」)
これぞ宝塚!を見たい時に
現在、宝塚でショートして上演されている作品の源流になっているのが「モン・パリ」。日本で1番最初に作られたレビュー作品と呼ばれています。
この作品から時を経ること50年。それを記念して花組と雪組で上演されたのが「ザ・レビュー」です。
華やかでゴージャス、色彩豊か。いつの世も宝塚のショーにあるべき要素がふんだんに盛り込まれたショーなので、これぞ宝塚と思えるものを見たい時にいかがでしょう。
もう1つ、「これぞ宝塚のショー!」思わせる要素が「ストーリー性」。
普段のショーの中では、1場面ごと舞台やキャラクター設定が変わるので、ストーリー性を感じることは少ないかもしれません。
でも「EXITER!」にも「シトラスの風」にも、1場面ごと完結するストーリーが流れています。
それは「ノバ・ボサ・ノバ」のような全編通したストーリー性のあるショーを除いた、他のショーでも変わりません。
短い時間でも、ダンスや歌を駆使して物語を表現する。そんな、宝塚のショーの基本姿勢ともいえるものを「ザ・レビュー」は見せてくれます。
特に注目したいのが1977年の初演時に作られ、1999年の再演時に復活した「夢人」。
「宝塚のモーツァルト」とも呼ばれた寺田瀧雄先生の同名曲から始まる、美しいバレエのシーンです。
ちょっぴり寂し気な「夢人」に扮したトップスターさんが、切々と歌い上げる「夢人」。もうそれだけで、場面の世界に引き込まれていく感覚を味わえるでしょう。
シーン全体を通すと少しホラーチックなおとぎ話仕立て。でも、最後にはちゃんと希望のある結末がやってくるのも宝塚。
もの悲しさ、美しさへの陶酔、ハラハラ、安堵、感動とお芝居並みに物語に揺り動かされる気持ちの変化も、ぜひ味わってください。
なお、他の年に再演されたバージョンでも、ストーリー性の高いシーンが組み込まれています。
パリの下町やニューヨーク、砂漠なんかが舞台になっているバージョンも。
ショーはストーリーが見えづらいという方も、「ザ・レビュー」を見比べると、どんなストーリーがどんな風に歌やダンスで表現されるか、つかみやすいかも知れません。
同じショー?!と思わされる変化
先ほど登場した「シトラスの風」も改変を重ねていますが、「ザ・レビュー」も大きな改変を経てきた作品です。
シーンの改変は、ショー作品を再演する上では珍しいことではありません。でもこのショーは、登場人物の名前や設定も大きく変わります。
年々、トップスターや主要スターに冠されるシーンごとの役名もオシャレになってくるのが分かるので、時系列を追って見るのも面白いですよ。
さらに、同じ年に上演された花組版・宙組版の中でさえ違うシーンがあるので、見比べると「これが同じショーなの!」と驚くかもしれません。
それでも「ザ・レビュー」というメインのタイトルが変わらないのは、やはり「宝塚のショーはかくあるべし!」という根っこがしっかりしているからでしょう。
宝塚が大切にしている根っこの部分と、変幻自在さの両方を楽しめる「ザ・レビュー」。こちらもぜひ、見比べを楽しみたい作品です。
雪華抄
作・演出 原田諒
公演年と主な出演者
- 2016年花組 明日海りお 花乃まりあ 芹香斗亜
和の魅力にハマろう!
宝塚のショーといえば、キラキラのスーツやドレスにクラシックやジャズなど、西洋の音楽、が定番でしょう。
しかし、和装で魅せるショーもあるのが宝塚のいいところ。
普段見られない、豪華なお着物姿のタカラジェンヌや、いなせな着流し姿の男役さんを「和もの」のショーならではの魅力です。
「雪華抄」は再演こそまだされていませんが、和物の魅力がぎゅっと凝縮されたショー。
今までご紹介したショーとはちょっと傾向が変わりますが、宝塚ファンであればぜひ、知っておきたい「和もの」の魅力にあふれたショーなので、ここでご紹介します。
まず、幕開きが豪華。拍子木の音を合図に明かりがつくと、梅の柄が印象的なお着物姿のタカラジェンヌが銀橋まで居並んでいます。
スパンコールがぎっしりとついたお衣装とはまた違う、和ならではの艶やかさに圧倒されるシーン。このシーンだけでも目の保養といえるでしょう。
着流し姿が楽しめるのは、第5場。日本各地の民謡を歌い継ぐシーンで見られます。
お着物は白を基調に黒が入っているチームと、そこに水色が入ったチームとに分かれていて、なんともさわやか。
幕開きのシーンとは対照的な色合いを見せるシーンですが、日本の「粋」や「いなせ」を存分に堪能できるシーンです。
その他、歌舞伎でも有名な「安珍清姫伝説」をベースにしたシーンや、トップスター・明日海りおさんの鷹と柚香光さんの鷺の対決を描くシーンも。
和のテイストのものって、なかなか見る気になれないという方にも、ぜひ注目していただきたい、見応え満載のショーに仕上がっています。
専科さんの「技」にも注目!!
専科というのは、花・月・雪・星・宙のどの組にも属さないタカラジェンヌたちの集まり。比較的、ベテランさんのタカラジェンヌが属しています。
この専科に属するタカラジェンヌのことを「専科さん」と呼ぶことが少なくありません。
専科さんは「この人の芝居で場面を締めてほしい」「このポイントでこの人の歌がほしい」といった演出家のこだわりによって出演されることが多いのが特徴です。
「雪華抄」には、専科から日本舞踊の名手、松本悠里さんが出演されています。第2場では、ソロシーンを担当。
日本舞踊に長く、取り組まれている方だからこそ見せられる「プロの技」ともいうべき踊りが、ショーをキリッと引き締めてくれます。
このショーに限ったことではありませんが、専科さんだからこそ持ちうるベテランの技にもぜひ、注目してみてください。
まとめ
様々な組で再演される名作もあれば、組の十八番になっている名作もあるのが宝塚のショー。また、いつものショーとはちょっと違う、和もののショーも上演されています。
好みは人それぞれでしょうが、どんなショーを見ようかと悩んだらまずは、こんな名作ショーから見てみてはいかがでしょうか。
このショーだったら、このメンバ-でも見てみたいなどと想像が膨らんで、より一層好きになれるかもしれません。
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