宝塚歌劇団の舞台はとてもきらびやかで、タカラジェンヌ一人一人が輝いて見えますよね。「私も宝塚の舞台に立って輝きたい!」と感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回はそんな憧れのタカラジェンヌになるための道すじをご紹介します。
タカラジェンヌを生み出すのは宝塚音楽学校
タカラジェンヌになるためには、もちろん「歌劇団」ですから、宝塚歌劇団への入団が必要ですね。そして、宝塚歌劇団への入団をするには、「宝塚音楽学校」と呼ばれる私立学校を卒業することが必須条件なのです。
宝塚音楽学校ってどういうところ?
みなさんは「宝塚音楽学校」をご存知ですか?前身となる「宝塚唱歌隊」が設立されたのはなんと大正2年。ここから団員の養成所として多くのタカラジェンヌを輩出してきました。現在、音楽学校は「予科」と「本科」の2年制となっており、この間にタカラジェンヌに必要な技能や心構えを学んでいくのです。
音楽学校はどこにあるの?
学校の場所は兵庫県宝塚市、宝塚大劇場の隣にあります。阪急今津線の宝塚南口駅から宝塚大橋を渡ると宝塚大劇場と宝塚音楽学校を同時に眺めることができます。
音楽学校に入るためには?
音楽学校に入学できる人はどんな人?
宝塚音楽学校の生徒になるためには、年に1度行われる入学試験に合格しなければなりません。入学が叶うのは、容姿端麗で宝塚の舞台人に適すると判断されたたったの40名。
しかも応募資格には年齢の条件があります。受験時に「義務教育終了」から「高校を卒業する」15~18歳の女子のみです。したがって、受験資格は最大でも4回だけなのです。
その上、受験者の人数は毎年1000人前後なので、合格倍率は20~25倍にも登ります。
タカラジェンヌの原点には、こんなに厳しい競争があったのです。舞台に立つ彼女たちの華やかさ、美しさもひときわ増すように感じますね。
試験ではどんな科目があるの?
受験生が挑む試験科目は「面接・歌唱・舞踊・健康診断」で、第3次試験まで行います。
もちろん、歌唱や舞踊などは通常の義務教育で教わることはありませんから、教室やレッスンに通い、試験に挑む必要がありますよね。
かつては「声楽・バレエ」など、未経験者には高度な実技科目があったため、受験をためらう少女たちも多かったようです。
しかし、2009年度の試験からは、実技科目より面接への比重を高めたことによって、受験生たちの素質や個性、可能性を重視するようになりました。「可能性」を判断する試験官も責任重大です。
音楽学校の授業は?
試験に合格し、音楽学校入学を果たした彼女たちはプロの講師による様々なレッスン=授業を受けていくわけですが、その授業科目も様々です。
演劇、合唱、声楽、ソルフェージュ(読譜や新曲視唱)、バレエ、日本舞踊、モダンダンス、タップダンス、ピアノ、お琴、三味線など…ここでは書ききれないほど数多くのレッスンが授業科目として存在します。
これらのレッスンを予科、本科を通して受けていく必要があるため、彼女たちは9時から17時頃まで、日曜日や夏休み、冬休みを除いてぎっしりとカリキュラムが組まれているのです。
連日休みなくお稽古や公演を行っているタカラジェンヌは本当にタフだなぁ、なんて思ったことはありませんか?こういったところからもパワーが培われているのかもしれませんね。
音楽学校は厳しい!?
音楽学校は、授業の他にも様々な慣習やルールがあります。その中でも本科生が予科生の教育役として日々の過ごし方を教えてくれる伝統があるのはご存知でしょうか。
入学ガイダンス
音楽学校に入学すると、「入学ガイダンス」というものがあります。ここでは本科生が予科生に「制服の着方や帽子の持ち方、挨拶などの所作」を教えていきます。例えば、リボンタイの巻き方や、髪型(男役はリーゼント、娘役は毛先まで固く編み込まれた三編みのおさげ)、ソックスや靴、使用する腕時計のベルトの色まで厳しく決まっています。
授業前の掃除
予科生は、音楽学校内を隅々まで掃除をする慣習があります。この掃除場所は、入学ガイダンスの時に、本科生が予科生を分担する形で決めます。一度決められた掃除場所は1年間変わらず、毎日授業が始まる前までに完了させなければなりません。
校内での過ごし方
まず校内での私語は厳禁です。笑ったり、走ることもNG。
廊下では来客が通りやすいように一列になって端を静かに歩かなくてはいけません。
登下校では2列縦隊(最大6人)で行進し、もちろん嬌声や笑い声をたてることは禁止。姿勢を正してまっすぐ前を見つめ早足で歩かねばなりません。もちろん道行く上級生一人一人に挨拶をします。
私服や持ち物のルール
音楽学校性は私服や持ち物にもルールがあります。色は白・黒・グレーで、カラフルな服装は着ません。ブランド品を持つことや、プライベートの化粧も禁止です。
さらには目覚まし時計のような音の鳴る物を持つことも禁止されています。
阪急電車にお辞儀をする
阪急電鉄(宝塚線・今津線)それぞれに乗車をするとき、最後尾の車両に乗らなければなりません。これには、タカラジェンヌ(=上級生)が「阪急電鉄の従業員」という立場であるため、上級生への礼、外部の乗客への礼を為す目的があります。
そのため車内の着座も厳禁、下車駅では走り去る阪急電車を最敬礼で送ることも決まりとなっていす。
こうした厳しい規則から「女士官学校」と呼ばれていた時代もあったほどです。
本科生は予科生へこれらを日々指導し、面倒を見るシステムがあるのです。ただし、本科生になるとこれらの規則は一部緩やかになるようです。
とても厳しい環境ですが、こうして宝塚のモットーである「清く正しく美しく」を体現する一人前のタカラジェンヌになっていきます。宝塚音楽学校は、華やかで洗練されたタカラジェンヌの、まさに原点なのです。
音楽学校を卒業すると・・・
いよいよ初舞台!
音楽学校の卒業認定がされ、入団式を経ると正式に宝塚歌劇団の研究科1年生(=研1)になり、その年の春の大劇場公演に全員出演します。これを「初舞台公演」と呼び、彼女たちを「初舞台生」と呼びます。
初舞台公演では、開演前の初舞台口上と、ショーでラインダンスを披露するのが一般的です。初々しいタカラジェンヌ達の初登場はファンもワクワクし、一際大きな拍手が送られます。
組配属と組まわり
無事、初舞台公演を終えたら研1生の組の所属が決められていきます。これを「組配属」と呼びます。
組配属の仕方は年度によって違いがあり、初舞台公演直後に組配属されない場合もあります。初舞台公演後に研1生を班分けして、各組の本公演に分かれて出演することがあるのです。これを「組回り」と呼びます。
通常、組配属されると、配属された組以外にタカラジェンヌが出演することはまずありません。組回りをすることによって、いろいろな組に出演する新米のタカラジェンヌを観ることができるのは楽しみでもありますね。
まとめ
いかがでしょうか。タカラジェンヌ達はこのような狭き門、厳しい過程を経て宝塚の舞台で活躍しています。とはいえ、現在の宝塚音楽学校の入学試験の間口は広がりつつあります。「憧れはあるけれど未経験で自信がない」そんな少女たちの挑戦によって、未来のタカラジェンヌがどんどん生まれていってほしいですよね!