宙組は2018年に創立20年を迎えた、宝塚の中で最も新しい組。
宝塚を見始めたばかりの方はもちろん、花組や月組といった宝塚ができて間もない頃から存在する組を応援されている方にはなじみが薄い組かもしれません。
そんな宙組の魅力はどんなところにあるのでしょう?今回は、宙組の魅力をご紹介します。
持ち味が異なるトップコンビの掛け算
トップスターとトップ娘役は、公演の度に相手役を務めあうおしどり夫婦。その2人の持ち味が違ったら、かみ合わないんじゃない?と思われるかもしれません。
しかし驚くことなかれ。今の宙組トップコンビには持ち味が異なる2人だからこそできる、掛け算の魅力があるのです。
大人の魅力の真風涼帆さん
2019年現在の宙組トップスターは今年で入団13年目となる真風涼帆さん。その魅力をあえて一言で語るなら「大人の魅力」と言えるでしょう。
2016年に今の相手役である星風まどかさんと組んだ「ヴァンパイア・サクセション」での、火事場から消防士として少女を救い出すヴァンパイア・アルカード。
2011~2012年には星組の新人公演で、2019年には自身が主演として取り組んだ「オーシャンズ11」では、凄腕泥棒集団をまとめるリーダー、ダニー・オーシャン。
どちらも大人の包容力や、さりげなくにじむ優しさを要求される役ですが、彼女の魅力は、こういった役に取り組む時によりいっそう輝くのが特徴です。
一方、「WEST SIDE STORY」のトニーなど少年役を務めても違和感がなし。こういった役柄の幅の広さも、魅力の1つでしょう。
キュートで愛らしい星風まどかさん
真風涼帆さんの相手役・星風まどかさんは今年で入団5年目。宝塚では、入団年数のことを「学年」と呼びますが、真風さんと星風さんの学年差は8年になります。
学年の違いだけで「守る男」「愛らしい女の子」という図式が成立しそうですが、星風さんはふっくらとした愛らしい顔立ちが特徴。とにかくキュートなのです。
「WEST SIDE STORY」で演じたマリアは兄や年上の女の子たちに守られる立場の女の子。そんないたいけな女の子、というイメージにぴったりなタカラジェンヌです。
そんなキュートさやいたいけなキャラクターがぴったりハマる一方で、「オーシャンズ11」ではヒロイン・テスを大人っぽく演じきったのは記憶に新しいところです。
魅力が違うから、魅力が引き立つ?
もし、真風さんの相手役がもっと大人っぽい娘役さんだったらどうなるでしょう。「守る男」や「さりげない男の優しさ」を見られる機会は、今より少なくなるかもしれません。
逆に真風さんがもっと少年ぽさの際立つ男役さんや、中性的なフェアリータイプだったらどうでしょう。見られる演目が限定されるかもしれません。
真風さんと星風さんの魅力が違うからこそ、お互いの魅力が引き立つ。そんな互いを引き立てあって生まれる魅力が、今の宙組の魅力といえるでしょう。
長身&イケメン揃いのスター
宙組といえば、創立時から現在に至るまで長身の男役スターが多いのも特徴。長身の男役さんによる群衆芝居やダンスは圧巻です。
ここでは、身長170cmを超える長身&イケメンの宙組スターをご紹介しましょう。
芹香斗亜
身長173cm。宙組で2番手を務めています。トップに次ぐスターさんということですね。
最近は「WEST SIDE STORY」のベルナルドに代表される、主人公に敵対する役どころや骨太な役どころが多い印象。
でも、花組在籍時に「ME AND MY GIRL」でお坊ちゃまのジェラルドを演じるなど、真っ白な役も似合う品の良さが魅力です。
素顔は、身長の高さには驚くものの、よく笑う色白のかわいらしいお嬢さんという雰囲気。このギャップもたまらない魅力でしょう。
桜木みなと
身長170cm、宙組の3番手さんです。
入団1年目の新人公演では、当時宙組に在籍していた凪七瑠海さんの役を演じたホープ。その後も、新人公演・本公演を問わず着実に実力を伸ばしてきたスターです。
表情豊かな歌やお芝居で、観客を夢の世界へと誘う桜木さん。
素顔メイクをされていても、そのシャープな容姿や涼やかな視線は注目を集める「ザ・素敵な男役」。入出待ちの時にも注目しましょう。
鷹翔千空
身長175cm。入団4年目ですが、新人公演での主演を重ねている注目のスターです。
特に、歌の実力や押し出しの良さは折り紙付き。トップスターが主演を務める本公演でもぜひ注目してみてください。
また、素顔メイクでも写真撮影にはビシッとポーズや視線を決めて応じる意識の高さは、これからの彼女の伸びしろを期待させてくれます。
「歌劇」や「グラフ」などの写真にも要注目です。
組全体の傾向と魅力
トップスターさんや注目のスターさんの魅力は組の魅力に通じるもの。ここまではそんな、スターさんたちの魅力に迫ってきました。
では、宙組全体の傾向や魅力はないのか?と思う方も見えるかもしれません。ここでは、組創立時のことも少し盛り込みながら、組全体が持つ傾向や魅力をお話しします。
得意分野は現代劇&コスチュームもの?
宙組は1998年の創立以来、時代劇を上演する「和物」よりも、スーツでパリッと決めた男役が勢ぞろいする「現代劇」が多いのが特徴。
そのため、ここまでにご紹介したような高身長で現代的な男役さんが集まりやすい組です。90年代終わりに創立されたという時代背景も、関連しているかもしれませんね。
また、現代ものとはそぐわない感じもしますが「ベルサイユのばら」「エリザベート」など豪華な衣装が特徴的な「コスチュームもの」も多く上演しています。
TVドラマで現代劇になじんでいる方にも、宝塚を見るならコスチュームものがいいなという方にも、とっつきやすい組といえるでしょう。
創立当時の魅力を引き継いでいる?
宙組と聞けば「コーラスでしょ?」という方も多いかもしれませんね。2014年に行われた宝塚100周年のコンサートでも、宙組の娘役陣がコーラスを務めています。
圧巻のコーラスの源流は、組創立メンバーの影響が大きいでしょう。
歌唱力に定評があったトップスター・姿月あさとさんをはじめ、出雲綾さんや美々杏里さんなどの歌姫が多く在籍していました。
現在の宙組で副組長を務めるのが、そんな方たちのもとでタカラジェンヌとして活躍してきた美風舞良さん。
ご自身も下級生の頃から様々な場面で歌声を披露してきた彼女が、組をまとめるメンバーとして活躍しているのです。
そんなところも、「コーラスの宙組」を脈々と受け継いでいる秘密なのかもしれません。
一方で、創立時からダンサーが多かったのも宙組。星組でトップを務められた湖月わたるさん、現花組組長の高翔みず希さんなどが在籍されていました。
現組長の寿つかささんも、「エリザベート」の黒天使や「シトラスの風」の明日へのエナジーなど、重要なダンスシーンをずっと担ってきた方の1人です。
コーラスに注目が集まる宙組ですが、組創立時からのダンスリーダーが率いる、見どころにあふれた組といえるでしょう。
舞台と素顔のギャップ
ここまでは宙組の魅力、いわば舞台での顔をご紹介してきました。が、きっとこの記事にたどり着いた方は「素顔」も気にして見えるのではないでしょうか?
そんな、宙組の「素顔」について少しお話ししましょう。
宙組はよく食べる?!
宙組の素顔を語るうえで欠かせないのは「食べ物」。高身長イコール食べる量が多くなるのか、もともと食欲旺盛な方が集まるのかは不明ですが、よく食べる組といわれます。
食にまつわるエピソード、少しだけご紹介しましょう。
- 差し入れは争奪戦。
- 冷蔵庫に入れるものには、名前を書くように貼り紙がされている。
宝塚といえば、厳しい上下関係で有名。でも、宙組に食べ物の差し入れがあった時だけは別のようです。
上級生であろうが下級生であろうが、争奪戦に参加。まるで、兄弟でご飯のおかずを取り合うような様相をなしているのですね。
舞台で多くのファンの目をハートにしているタカラジェンヌたちの争奪戦、想像するとほほえましく思えて、親近感がわいてしまうのは私だけでしょうか?
冷蔵庫の「食べ物に名前を書くルール」については、厳密にいうと「置いておく食べ物にはすべて記名」だそうです。
ちょっと用事を済ませる間、お菓子を机の上に置いておこうと思って、名前を書かないまま放置したとしましょう。
用事から帰った時、そのお菓子がなくなっていたとしても文句は言えません。名前を書いてなければ、誰が食べてもおとがめなしなのが宙組なのです。
ずっと宙組で育ってきたタカラジェンヌは、そんなの当たり前という感覚になるのかもしれませんが、組替えで宙組に来た方にとってはびっくりでしょうね。
でも、食べることに欲がある組だからこそのルール。なじんでしまえばきっと、おいしいものの争奪戦に加わっているのでしょう。
おいしく元気に食べて、キラッキラの舞台を届けてほしいですね。
まとめ
他の組に比べると、2018年にようやく人間でいう「成人」を迎えた宙組はまだ、歴史の浅い組。
しかし、高身長でスタイリッシュな男役中心に繰り広げられる舞台には、たくさんの魅力が詰まっています。
オフでは、まるで兄弟のように食べ物の争奪戦を繰り広げているというほほえましい一面も垣間見せる宙組。
親近感を抱かせつつも舞台では受け継がれてきたスキルを活かしてビシッと決める、そんなギャップも宙組の魅力といえるでしょう。
ぜひ、宙組の舞台に注目してください!